【広告主向け】アフィリエイターを提携解除する際に注意すべきこと

拒否をする人

アフィリエイト広告の提携解除とは、アフィリエイターとの提携関係を広告主が解除をすることです。注意点や対応を共有します。

アフィリエイトの「提携解除」とは

アフィリエイトの提携解除とは、提携済みのアフィリエイターとの提携関係を広告主が解除することです。通常はASPへ依頼する必要はなく、広告主側の管理画面で対応できます。

広告主が提携解除を実行すると、アフィリエイターにASP経由のメールで「広告主から提携が解除されました」と届きます。提携解除後は、アフィリエイターは広告主が提供する広告素材の利用ができなくなります。

アフィリエイト広告を運用中に、新しい法律が施行されたり、プログラム内容の見直しで提携条件の更新をすることもあるでしょう。プログラム内容の更新により、提携条件に合致しないアフィリエイターを提携解除しなければならない時に、注意すべきことを共有します。

提携解除の基準を作成する

プログラム詳細の更新による提携サイトの解除を検討している場合は、提携済みのすべてのアフィリエイターに、プログラム詳細の内容が更新されたこと、提携条件の変更があったこと、提携サイトの見直しをしていくことをお知らせします。

まず大前提として、やみくもに提携解除することはおすすめできません。検討すべきタイミングはASPのガイドラインの更新や、広告主が提携条件の変更をした時です。それぞれ解説していきます。

ASPのガイドライン更新

アフィリエイト広告に関わる法律には、景品表示法における優良誤認表示(実際の商品・サービスよりも著しく優良であると誤認させる表示)、有利誤認表示(実際よりも著しく有利であると誤認させる表示)、著作権や肖像権などがあります。新たな法律の施行などで、ASPのガイドライン(規約)が大幅に更新されることがあります。アフィリエイト広告に関わる事例で言えば、2023年10月に施行された景品表示法のステマ規制(ステルスマーケティング規制)です。

広告であることを隠して宣伝を行う行為は「ステルスマーケティング(ステマ)」となります。アフィリエイターの表示であっても、広告主は消費者庁や都道府県から措置命令や課徴金などの行政処分を受けることになります。そのため、アフィリエイト広告を利用しているアフィリエイターにも、消費者庁が推奨している表示方針に従って、運営サイト上に「PR」「広告」「〇〇ショップとの提携」などの表記してもらうように依頼する必要があります。

ガイドライン更新時には、ASPから案内が登録アフィリエイター全員に配信されていますが、中には対応が遅れているアフィリエイターもいると考えられます。広告主としても、提携アフィリエイターに配信できるメールマガジン機能を使って、「あらためて、お知らせがあります」と再度周知をしておきましょう。

提携済みアフィリエイターを目視して確認していると、ルール違反な紹介をしているサイトを見つけたこともあったと思います。何度か修正依頼をしても対応してもらえない場合は、提携解除もやむなしと対応していきましょう。

提携条件の変更と見直し

ステマ規制のように、すべての広告主が対応する必要のある条件変更だけでなく、アフィリエイト広告を運用をしていく中で、プログラムの見直しをすることもあるでしょう。変更が確定したら、アフィリエイターに提示するプログラム詳細を更新します。プログラム詳細とは、アフィリエイター側の管理画面のプログラム検索結果で、広告主のサービス名をクリックすると表示される、広告主の商品やサービスの情報、成果条件や成果報酬額、注意事項などの詳細をまとめて確認できるものです。提携に関するガイドラインや禁止事項を更新して、提携できないサイトの条件をアフィリエイターに提示しておきましょう。

例えば、以下のようなものです。

変更前の例変更後の例
リスティングなどの広告出稿を可・リスティングなどの広告出稿は不可
・社名の完全一致、部分一致などの禁止ワードへの出稿を不可
商品リンク可商品リンクはモデル等、人物写真の使用不可

広告出稿は不可

リスティングなどの広告による集客を許可していたが、最近の報道などを受けて、禁止へ変更するケースが増えています。

ASPでは、リスティングなどの広告を利用してアフィリエイターが集客することに制限を掛けていません。アフィリエイター自身が広告費を負担してくれるので、むしろ推奨しているASPもあります。筆者も、商品やサービスによっては「可としてもよい」とお伝えすることもありますが、アフィリエイターは身銭を切って集客しているので、できる限り多くの成果につなげようと大げさな訴求になることもあり、健康食品や医療美容などは表現次第で規制の対象になるので、リスクを避けるためにも「不可とした方が無難」としています。

また、社名や商品名などのキーワード以外は可としている場合もあるでしょう。その場合は、アフィリエイターにわかりやすく「社名・商品名のキーワードは不可」としておきます。
※もちろん、アフィリエイターの中にはルールを守って出稿してくれる方もおられるので、その都度、個別に判断していくことが望ましいです。

条件変更をしたことをアフィリエイターに通達をしてもなおも出稿が確認された場合は、提携解除をしていきましょう。

人物写真の使用不可

商品リンクを可にしていると、アフィリエイターはショップ内のどのページの画像を使うことも、どのページにリンクを貼ることも自由になります。例えば「基本的に利用しても可だが、人物など一部許可しない」場合はプログラム詳細に記載しておく必要があります。特に、モデルなど肖像権がある被写体がサイト上にある場合は注意が必要です。例えばタレントを起用していれば、契約期間終了後はWebショップと同様にアフィリエイトサイト上からも掲載を取り下げることとなりますが、多数のアフィリエイターが商品リンクで利用していれば、掲載の取り下げは容易には進みません。あらかじめ不可にしておくことで「知識不足による不用意な掲載」や、「故意に継続して訴求をする」というリスクを減らすことができます。

広告主としては、『せっかくタレントを起用しているので、アフィリエイト広告にも活用したい』と考えることもあるでしょう。その場合はバナー広告素材を作成して、広告素材としてアフィリエイターに提供することをお勧めします。バナー素材であれば、契約期間終了に合わせて、広告主が管理画面から広告素材の更新をすることが可能です。この場合は「タレントの画像は不可。バナー広告素材を利用ください」と、アフィリエイターに案内をしましょう。

現在利用しているアフィリエイトサイトがあれば、修正依頼をしましょう。無断利用や修正に対応してもらえない場合は、提携解除もやむなしと対応していきましょう。

過去の提携解除事例

これ以外にも、提携解除を実施した例があります。過去のものを参考に、いくつかご紹介します。例えば「有効な送客につながっていない(クリック報酬を設定しているが、自己クリックと思われる送客しかない)」「アフィリエイターの掲載内容に問題がある」「アフィリエイターの管理ができない」、そして「提携したアフィリエイターが、未稼働のままだから」「提携したものの、成果が見込めなさそう」などです。

クリック報酬を設定しているが、有効な送客につながっていない

クリック報酬を設定していると、アフィリエイトサイトに掲載されたバナーなどの広告がクリックされた時点で成果となります。成果への難易度の低さから、主に初心者のアフィリエイターに好まれていますが、その難易度の低さから、広告主の「有効な集客につなげてほしい」という希望とは違い、自己クリック(自分でクリックする)や、つながりある人に依頼してクリックしてもらうなどの不正クリックが増えてしまう場合があります。管理画面の日別レポートから広告の表示回数とクリック数が同数程度の場合は、有効な送客がされていないと判断して提携解除の措置をとる必要があります。

掲載内容に問題がある

アフィリエイターの紹介記事が、広告主の意図しない法令違反になりかねない訴求になっていることがあります。例えば、医薬品ではないサプリメントにも関わらず『効果があった』と記載したり、『痩せる』『生える』といった過激な表現とともにビフォー・アフター画像を掲載しているケースなどが該当します。まずはアフィリエイターに期日内に該当箇所を修正するように連絡をして、期日内に対応されない場合は提携解除を行います。

アフィリエイターを管理できない

未稼働(広告を掲載していない)のアフィリエイターを提携解除する例があります。広告主としては、現状は未稼働であっても「どのような活動をするのか分からないアフィリエイターと、提携関係を継続することそのものがリスク」「今後も掲載(稼働)が望めない」などが理由と思われます。

確かに、全ての提携サイトを目視して表記を確認することや、アフィリエイターに修正依頼をすることは、社内の少ないリソースで運用している広告主にとって大きな負担になり得ます。景品表示法だけでなく、効果効能を過剰に訴求しやすい医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧・薬機法)への対応のため、知識不足やあえて過激に訴求しそうなアフィリエイターとは、むやみに提携関係にならない方が安全です。この場合にすべきことは、提携すべきアフィリエイターの条件をあらためて定めて、プログラム詳細に記載して、厳密な手動承認によるサイト審査を通過したアフィリエイターのみ提携するとよいでしょう。

課題は、今、提携関係になっているアフィリエイターへの対応です。別の記事(なぜ、以前は自動承認が推奨していたのか)で記していますが、アフィリエイターは提携関係になっていても必ず紹介をしてくれるわけではなく、およそ2割程しか稼働しないことが一般的なことから、できるかぎり多くの広告を掲載してもらうために、多くのアフィリエイターと提携することが推奨されていました。そのため過去に提携したサイトの中には「更新されておらず、今後も更新が見込めそうにない」「以前は問題なかったが、過激な訴求をするサイトを運営するようになってしまった」といったこともあるでしょう。この場合は、プログラム詳細の修正後、アフィリエイター向けメールマガジンで「提携条件が変更になりました」とお知らせして、該当するサイトとの提携を解除する可能性があることを周知しておきます。都度、条件違反に該当したアフィリエイトサイトを発見したら、提携解除をしていきましょう。

アフィリエイターが未稼働、または成果が見込めない

優遇すべきアフィリエイターのみと提携する、という選択をする広告主もいます。ASP担当者が仲介してくれるアフィリエイター、アフィリエイト別レポートで成果の獲得数が多い成績上位のアフィリエイター、有効なクリックが毎月発生しているアフィリエイターなど、成果が見込めるアフィリエイターのみと提携して、その他を提携解除してしまった例があります。

例えば「数か月間、クリックが発生していない」「稼働していない(広告素材を掲載していない)」ようなアフィリエイターは、悪質ではないものの、現時点では成果が期待しにくいと言えます。成果が見込めないからと、広告主の都合で提携解除を行うことで、アフィリエイターの心象を損なうことにもなります。

提携解除に際しては、十分な配慮が必要です。提携申請をしたアフィリエイターは広告主のショップを知っている、同カテゴリーを紹介しているなど、広告主に興味関心を持って提携しているものの、紹介のタイミングがなく未稼働でいることは多いです。提携関係であれば、セール情報や季節のおすすめをメールマガジン機能を使ってお知らせしたり、商品そのものを詳細に説明することで、ショップの魅力や商品を知ってもらう機会を増やすことができます。本当に提携解除が必要なのか、再度検討してみましょう。

提携していたアフィリエイターが「実は、ユーザーだった」「商品のファンだった」という可能性もあります。「未稼働だから」「成果につながらないから」と提携解除してしまうと、顧客であったり、潜在的に商品に興味を持っていた層を切り捨てることになってしまいます。未稼働であれば、紹介そのものをしていないので「過剰な訴求をしていない」、つまり何もしていない状態です。成果につながらないからと一方的に提携解除をしてしまう前に、まずは提携条件をメールマガジンで周知しておき、紹介したくなるようなキャンペーンや、成果につながりやすい情報提供をしてみることにチャレンジしていただきたいです。

提携解除の対応・注意点

禁止事項に該当している場合は、アフィリエイターに修正対応や広告掲載の取り下げについて事前に通知をすることが望ましいです。「〇月〇日までに修正にご対応ください。確認ができない場合は、提携解除を行う場合があります」と、期日を指定して対応を促します。

提携条件の変更により、提携解除をせざるを得ない場合は、アフィリエイターにメールマガジン機能を使って通達します。「プログラム提携を中止させていただきます」「貴サイトの宣伝状況が弊社の基準と合致していなかった為、契約を解除させていただくことになりました」「今回のご連絡は、貴方様のサイト内容の優劣等を判断したものではございませんことを、念のため申し添えておきます」といった文面で届くことが多いです。未確定の成果を気に掛けるアフィリエイターが多いので、「未確定の成果報酬は、期間内のものは通常通り対応します」と明記しておくと、アフィリエイターの不安を軽減できます。不正行為での提携解除でなければ、有効な成果は通常通り成果確定を実施しましょう。

「弊社の希望と合致していなかった」といった文言は多用されますが、アフィリエイターから見れば理由が分からず「一方的な通達」と感じることが予想されます。万が一アフィリエイターが御社の顧客だった場合、広告主から一方的に提携解除されることは、マイナスの印象になる可能性もあります。アフィリエイターは横つながりがあり、プログラムの停止や提携解除、成果報酬の減額などの情報は仲間内で共有されます。今後、運用方針が変わって「またアフィリエイトに力を入れて、提携サイトを増やしていこう」となった時に不利になりかねません。

そこでお勧めなのが、開示できる範囲で、提携解除の基準や理由を共有することです。アフィリエイトに関わる法律を守っていないアフィリエイターに対しては、「景品表示法違反(実際よりも著しく優良であると誤認させる表現をしている等)」「著作権法違反(他者の著作物を無断で複製・転載・改変して利用している)」などがあたります。「年齢制限のあるコンテンツを掲載」「リスティングなど広告出稿を確認」など広告主のガイドライン違反や、「提携後、1年以上広告掲載の確認できないサイト」「1年以上、成果が発生しなかったサイト」などです。

提携解除の案内メールの例:

件名: 【〇〇ショップ】弊社プログラムとのご提携について

弊社の【〇〇ショップ アフィリエイトプログラム】にご参加いただき、誠にありがとうございます。
長らくパートナーとしてご協力いただいておりましたが、貴サイトの掲載状況を慎重に確認いたしました結果、下記の理由によりアフィリエイト提携を解除させていただくことになりました。

解除理由:
貴サイトの掲載内容を確認いたしましたところ、弊社のアフィリエイトガイドラインで禁止しております年齢制限のあるコンテンツが掲載されていることを確認いたしました。

つきましては、規約に基づき〇〇〇〇年〇〇月〇〇日をもちまして、提携を解除させていただきます。
今回の決定は貴サイトの優劣等を判断したものではなく、弊社の運営方針に基づいた判断となりますことをご理解いただけますと幸いです。

これまでご協力、ご提携いただけたことに心より感謝申し上げます。
今後とも、〇〇ショップをよろしくお願い申し上げます。

〇〇ショップ アフィリエイト担当

理由の開示が不可であれば、「弊社の定めるアフィリエイトガイドラインで禁止している行為を確認できました」と、規約に該当しているという事実を共有することで、「理由があって解除された」と理解を促すことができます。提携解除を残念に思うアフィリエイターに配慮を持った文面を心がけましょう。

提携解除前の確認事項、まとめ

特にステマ規制以降、広告主のアフィリエイトプログラムからの撤退や、アフィリエイターの提携解除はたびたび発生しています。アフィリエイターは主に個人で取り組んでいる方が多く、法律に関する知識が不足していて、悪意なく修正せずにサイトを放置してしまうケースもあります。定期的にアフィリエイター向けメールマガジンで周知して、ガイドラインに沿って掲載してもらえるように働きかけましょう。

例えば「広告出稿は不可なので至急取り下げを」とアフィリエイターに修正依頼をしても、成果獲得のためにあえて修正に応じないこともあります。この場合は、期日まで対応が確認されなければ、即の提携解除もやむなしと言えると思います。

中には広告主の提携条件の変更で、アフィリエイターに落ち度がないのに提携解除となる場合もあるでしょう。広告主としては、アフィリエイトプログラムの運営を継続するためのひとつの手段かもしれませんが、アフィリエイター側からすると、突然の通達で収益源が断たれることとなり、理由がわからず不満を募らせることになりかねません。悪質なガイドライン違反に対しては毅然とした対応が必要ですが、「提携解除することが最適なのか」を今一度考えてみましょう。